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ロッドは曲がってこそパワーを発揮する。誤解が生じやすいから何度でも繰り返すが、硬く張りを持たせさえすれば、パワーが増すわけではない。そんなロッドは一見強そうに感じるが、階段状の流れはともかく、押しの強い流れはでは抜けないのだ。オトリの操作性も、細糸をカバーするクッション性も、見切れさせずに素早く抜く能力も、想定外の巨鮎の引きをいなす粘りとタメ性能も、全てを備えた上での「真のパワー」とは、ロッドの曲がりが源になる。さらに言えば、曲がって戻ろうとする「反発力」に宿る。ただ、ロッドを曲げるために必要なイメージや技術には個人差がある。曲げてパワーを発揮するのは瀬釣り用ロッドとして当然。理想的な瀬釣り用ロッドとは、多くの鮎師が“意のままにまげられる”かどうか。ここにすべてがかかっている。
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“競技メガ2種のハイブリッド” その理想的コンセプトすら凌駕。
今回のスペシャルMTが2014年にまで遡る開発当初から目指したもの、それはMTシリーズの集大成。競技メガトルク急背抜のパワーと、“ライトモンスター”の愛称がすっかり定着した早瀬抜の操作性と感度、これらの融合が当初のコンセプトだった。だが結果として2つを凌駕することになったのだ。 このロッドを手にした多くの人は、まず驚くだろう。「こんなに曲がって抜けるのjか獲れるのか?」と。しかしこれはスペシャルであり、かつMTである。Z-SVFナノプラスというダイワ史上最も反発力のあるカーボン素材を用いたからこそ、曲がることでいまだかつてない強烈なパワーを発揮する。 感度と操作性はライトモンスターを超え、25cmクラスをいとも簡単に抜き、上流へ返す。しなやかな曲がりとは裏腹に、パワーと粘りは競技メガトルク急瀬抜以上、不意に襲ってくる巨鮎にすら対応できるのだ。
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7本継+チャージリングで激変。 スケートの如く引ける、剛竿。 競技メガトルクが意識して「曲げるロッド」なのに対し、スペシャルMTが決定的に異なるのは「曲がってくれるロッド」であること。そして穂先からバットまでしなやかに曲がることは、操作性も劇的に向上させる。スペシャルAを彷彿させる引きの円滑さは、パワーロッドとしては、もはや異常ですらある。 このようにスペシャルMTが飛躍的に進化した核心は、7本継の採用にあるといっても過言ではない。節が長くなると曲がりやすく粘りが生まれる。MT調子を7本継で再現すれば、その長所を最大限に引き出せるのだ。継数が少なくなることでVコブシの効果がなくなるのでは? そんな心配もチャージリングが搭載された今となっては無用となった。
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一見ソフト、実は檸猛。 事実、球磨川の32.4cmを流心から引き剥がす。
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豪腕かつ繊細。 超高感度とフィネス特性は 2つの『SMT』が磨く。
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スペシャルとはいえMTは、パワーロッドである限り、どうしても肉厚太径構造は避けられない。そのため、あくまでトーナメント系ロッドとの比較問題だが、やや感度が落ちるのは宿命でもあった。しかしこのジレンマを『SMTチューブラー』が変えた。それはメタル部分が10cmと極力短く、硬くした軽量パワータイプが開発されたことで、劇的に。 カーボンチューブラと同等の軽さと操作性、パワーを備え、それ以上の衝撃的な感度は、瀬釣りの戦略をより緻密でハイレベルなものへと昇華させる。エビや根掛かり、石に巻かれて高切れするなどの致命的なトラブルも、その超高感度で未然に防いでくれるだろう。さらに標準替穂先の柔軟なSMTは、小型混じりや低活性時などにも威力を発揮する。
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求めたのは、瀬釣りの“回転力”。
ついに尺を獲るまでの潜在的なパワーを獲得したスペシャルMTではあるが、デカい魚を獲るなら「大鮎」シリーズがある。軽さや操作性がメインテーマなら、他にもっと選択肢があるだろう。 しかし獲るだけでは、操作しやすいだけでは、不十分。瀬の良型を軽々とあしらえ、トーナメントのような厳しい条件でも際立つ能力を備えることが、真の瀬釣りロッドには求められる。 例えるなら、奔流に腰まで立ち込んでいても、膝下の流れでレギュラーサイズを釣っているかのようなライトな感覚と手返しの実現。これが目指す究極の姿。そしてスペシャルMTこそ、数ある瀬釣りロッドの中で、この理想形に最も近い存在なのだ。
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